2016年4月14日-16日の熊本地震において、熊本学園大学は発災直後、750名の地域の避難者を受け入れる自主避難所を開設、その中に障害者のエリアを設置し60名の障害者を受け入れインクルーシブな避難所運営を行った。これは、従来の様々な大規模災害において課題とされながら実施されてこなかった画期的な取り組みとして高い評価を受けている。
一方、大学の施設設備だけではなく、学生をはじめ人的資源もまた最大限活用され、外部からの支援者および近隣の医療機関や福祉関係者の協力も得た。それによって、医療・介護の体制による衛生環境や健康保持、物資の確保、食事提供体制をはじめ避難住民の24時間支援体制が独自に築かれた。また、避難所の閉鎖にいたる過程では、避難者との個別対応を繰り返したうえでの生活支援(住居の片付け、転居の手伝いなど)や行き先(自宅帰還、新住居の確保)を行い、最後の避難者の次のステップへの移行が確定するまで45日間運営した。
このような独自の経験を、避難所運営を担った研究者たちが検証し、可能となった条件や社会的環境を明確にし、今後への教訓を提示することを目的とする。
そのために、第一に大学に残されている記録(文書、写真、当事者たちのオーラルデータ)を整理し、検証する作業、避難住民の被災状況や避難所生活、そしてその後に関わるアンケートおよび面談による調査を行う。さらに、この避難所を支援したNPO団体や外部支援の専門職団体組織への調査、さらに自治体との連携に関しての聞き取り調査を行う。
ついで、熊本地震下の代表的な避難所の実態を関係当事者に調査するとともに、東日本大震災における避難所運営の課題を現地訪問して情報収集に当たるとともに、当時の運営に当たった人たちと討論を行う。また、災害避難を所管する中央官庁(内閣府防災担当や文科省私学行政課)の資料収集ならびに面接調査を実施する。
これらを通して、熊本学園大学避難所の特質、成立条件、今後の課題を示すことができよう。